結婚とは 三
軍部は長男でないこと
結婚していないこと
一人っ子でないこと
選抜していった
あの若者は優秀で体も丈夫
いまでいえば最高のエリート であった
童貞であるがゆえに
高い精神性を維持できた
国家のために死ねたのだと
お父上様
お母上様
今日まで育ててくださり
ありがとうございました
今から出撃していきます
お母上様も長生きをしてください
さようなら
里子は結婚したら
このような精神性の高い
強い子供を育てたいと願った
里子は三人姉妹の長女である
母は現在三人目の男と同棲中
最初の男とは市役所の電話交換手時代に知り合った
懇親会がありたまたま席が隣だったため親しくなり
一年後に結婚
市役所のご両親の元に同居
姑が細かく、4人分作らなければならなかったが
「………ちゃんには、栄養とらせてね 」
メニューをチェックする
夜寝生活も聞き耳を立てているみたいで
母も神経的にまいって
里子が三年生の時別れた
裁判所の判断で里子は夫の家に引き取られた
少しでも優しい言葉をかけてくれたら続いたかも知れない
女にとって離婚は経済的な基盤を奪う
だからといってこの姑の老後をみると思うと悲しくなった
母は電話交換手をしながら夜間の美容学校に通い始めた
自立するためである
手に職をつけ、自立しなければこれからも
我慢を強いられる
そのためにはどうしても資格をとらなければ
母は希望を見出だすため
一生懸命だった
里子を連れて行きたかったが
戸口で
「必ず迎えにくるから
里子もいい子にして
おばあちゃんに可愛がられるように 」
疲れた顔で言った
そしてそっと手を握ってくれた
その手に涙が落ちた
目に涙があふれ
別れが来たのだと
感じた
体裁を調えて
いい夫婦を演じても
いつかは別れがくるならば
早い段階で決断したほうがよい
子供の心からの幸せを願うならば両親が揃ってなくても愛情を注ぐ事ができるだろう
里子はそのあとの人生を考えるならば
心田に確かな幸せの種を
植えていただいたと感謝している
いつも気にとめてくれる人がいる人は幸せであると
里子は思った