結婚とは 二

結婚とは 二

里子は結婚時、処女であった

 

男性と付き合った経験はなかった

 

職場の友達と鎌倉等にお寺を見に行った事はあったが

結婚を前提に深い思いになった人はいなかった

 

処女である事への寂漠感はなかった

 

古い人間なのか

大切なものは女心のなかで

 

大事な人にと差し上げたいと願っていた

 

女友達がロストバージンを話題にしても

人は人と思っていた

 

性に関してはおくてのほうだった

 

夫が童貞であったかどうか定かでないが

 

沖縄での結婚初夜まごついてぎこちなかった事

 

キスするにもだいた手が小刻みに震えていた

 

里子は、経験はなかったけれど女の直感でそう感じた

 

熱い抱擁を期待したが体の披露宴の疲れが勝っていた

 

しかし連日求められた

 

激しい接合のためベッドに大量の血がへばり付いた

 

痛い、痛いと大事な所が悲鳴をあげていたが

 

「愛している」「愛している」 陶酔のなかで夫を向かいいれていた

 

なにひとつ身につけず素裸で抱き合った

 

最高に温かった

 

ぎこちなかったが夫の舐める音が快いリズムに変化していった

 

秘部への愛撫は私を溶かしていった

 

「ああ …… 」

 

里子は体が開発され、新たに細胞が誕生しているように感じた

 

愛する人との営みほど大切な事はない

 

里子は40歳で結婚した

 

世間でいう結婚適齢期はとうに過ぎていたが

 

自分の結婚したい時が適齢期だと思っていた

 

本当に好きな人が現れるための時間が必要であった

 

里子は結婚に望み大切な条件があった

 

優しくて絶対に暴力を振るわない人

 

お金を毎月きちんと入れてくれる人

 

知らないことはなんでも教えてくれる人

 

 

この条件で巡り会ったのが夫 雅夫であった

 

知り合ったのは

鹿児島県の知覧基地の展示室で あった

 

特攻機に乗って、南方の星となった

若者の父母へのお手紙をよんで

 

おお泣きしていた里子がいた

 

そのときにちょうど雅夫も

雲仙・鹿児島のツアーに参加していた

里子とはちがうグループであったが

 

展示室のふちに手をかけ涙をぬぐう

しぐさ、

 

雅夫は一目ぼれした

 

 

 

里子はホテルに帰った

ツアー友達とおしゃべりしながら

床についた

 

展示室の写真でみた

あの18歳か19歳の若者を

思い出していた

 

国家のために犠牲になった

 

恋もしたかっただろう

キスもしたかっただろう